はじめに

米Morgan Stanley, chief cross asset strategistのMajerが最新のトレンドついて話してくれました。 

スタート

先週(5月10日の週)議論の中心となったのはインフレです。なぜなら4月、1か月内での米国における物価上昇率が4.2%を上回ったからです。これは2008年以来最大の数値です。そして当然これはスタグフレーション(経済成長なしに物価が上昇する状態)にさえつながる可能性があります。

一方でこのような大きな変化の際には一歩引いて深呼吸をすることが大事です。失業者数のデータが経済問題を過剰に誇張している可能性があるように、物価上昇率についても同じことがいえるからです。この物価上昇は、1970年代や1980年代に起きたものと同じでしょうか?おそらく違います。

同様に、コモディティの価格にも異常なことが起こっており、石油、銅および穀物の価格も、特に1年前の不況に比べて大幅に上昇しています。かなり高い物価は一般により多くの供給を将来もたらしますが、それがいつになるかわかりません。なぜなら、新しい銅鉱山の建設、新たな油井の掘削、または新たな農耕フィールド計画、いずれにせよ時間がかかるためです。

興味深いことに、ほとんどの商品は、現在の供給と将来予測される供給の両方込みで取引されていることがほとんどです。将来の商品価格は、供給が過剰になった場合大幅に下落すると予想されておりますが、市場の兆候を見る限り、過剰な供給はまだ起こっていないと考えています。

とはいえこれらの問題は、需要と供給も商品市場をはるかに超えたところで起こるのです。

予防接種を打った人口が増加し、制約が解除されるにつれて、多くの消費者は失われた時間を埋め合わせるために昨年蓄積した貯蓄のを費やそうとしているかもしれません。

これから人々がお金を使いたいと思うであろう特定の分野の商品やサービスの供給が増加してきました。一般的に言って、ホテルの部屋、航空会社の座席、レンタカーやレストランは1年前よりも過剰供給を行っていますが、それらに対する需要はこの過剰な供給をも上回っているのかもしれません。

そのミスマッチは物価を押し上げる(インフレを引き起こす)可能性がありますが、経済の改善に後押しされた上昇であるため、正常といえます。

このため中央銀行にとっては、上昇した物価が正常であるか異常であるかを判断することは非常に難しいのです。結論を言うと連邦準備制度理事会とイングランド銀行は、これらの初期インフレを見過ごす可能性が最も高いと考えています。というのも、コロナによる昨年の大不況を鑑みると、物価上昇率は過去10年間で異常に低く、おそらく順調に予想されていた右肩上がりの物価上昇率に追いつくのでしょう。

しかし、2010年から2011年にかけて、不況から物価が急上昇したという別の教訓があります。コモディティがその価格上昇の大きな部分を占めていました。欧州中央銀行は、この時金利を2倍に引き上げましたが、あとから見るとこれは見当違いな行動でした。その経験により、一時的な物価上昇に対応して行動を起こすことを、あらゆる中央銀行が少し躊躇する可能性があります。

まとめると、過去の経験を基に中央銀行が忍耐強く現状を維持することで、インフレ圧力は夏の一過性なものとなると予想されます。

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*上記のコンテンツはPodcast "Thoughts on the market"を和訳したものであり、情報提供のみを目的としております。また内容は作成時に入手可能な情報に基づくものあり、読者様の財務状況や投資目的を考慮しておらず、内容が適さない可能性があることにご留意ください。