はじめに

J.P. Morgan, マルチ・アセット運用グループの最高投資責任者 Jeff Gellerが、資産配分をコロナでどう変化させてきたか、また今後どのように配分させていくか話してくれました。この話は、次の暴落の際に自分の資産をどのように守るべきかの参考になるハズです。

マルチアセット運用とは?

マルチ・アセット運用とは、複数(マルチ)の資産(アセット)グループへの投資を同時に行うことで、自分に合ったリスクとそれに伴うリターンを狙う投資手法です。この手法は複数の株式へ投資金を分散させる方法とは異なり、株式、債券、不動産やコモディティといった複数の資産クラスに投資する手法です。

僕たち一般人がマルチ・アセット運用を行う一番簡単な方法は、様々な資産クラスのETFや投資信託を購入することです。例えば資産が100万円あるのなら、70万円で外国債券インデックスファンドを、20万円で外国REITインデックスファンドを、10万円で外国株式インデックスファンドを購入する、といった形です。

では早速、Jeffがどのように彼が保持する資産をコロナ禍で切り替えてきたか聞いていきましょう。このブログの最後に、投資細胞くんおすすめの投資信託も紹介するのでぜひ最後まで読んでいってください。

対話スタート

司会:今日は来てくれてありがとうDavid。早速だけど、この一年間どのようにリスクマネジメントしてきたか教えてくれないかい?

Jeff:最初に行ったのはもちろんリスクを下げることだったよ。そのための三つのアイデアは、①高利回り債券の保有量を減らし、②金利リスクの高い債券(金利が下がると価値が上がる債券)に切り替えたんだ。そして③株式リスクプレミアムを7~8%引き下げた。これらは大体2020年2月の終わりから3月の初めには終わっていたね。3月の終わりにはFEDが企業サポートを強化することを発表したから、そこから徐々にリスクを上げて行ったよ。まずはハイグレード債券と高利回り債券の買戻し、そして2020年4月末には中国で景気回復の兆しが見られたから株式の買戻しも始めたんだ。それからしばらくはこの状態を維持していたんだけど、ワクチン接種の開始から一気に忙しくなった。より小規模でハイリスクな企業や、新興国株式にも目を向けなければならなかった。なぜなら世界全体の経済が底上げされているような状態だったからね。こんなことは2017~2018年に見られた成長以来だよ。

司会:より国外市場に目を向けているんだね。国際市場での現在の投資チャンスはどこにあるとJeffは思っているのか教えてくれないかい?

Jeff:今はヨーロッパの株式市場に注目しているよ。アメリカはイギリスに倣ってワクチン接種をガンガン進めているからね。アメリカ経済がワクチン接種によって回復している以上、同じくワクチン接種を推し進めているヨーロッパ株式市場でリスクを取ることは僕らにとって必然的だ。一方で、新興国株式については11月までは通常より5%比重を上げていたんだけど、最近は通常より3%低めの比重で保持しているよ。理由の一つは新興国株式市場をけん引する中国でのワクチン接種が遅れているからだね。このために中国の経済成長は他の国より多少遅れると考えているよ。だから新興国株式に費やしていた資金を今はバリュー株景気敏感株メガキャップ企業への投資に費やしているんだ。成長株の保持率を上げるのは2022年の最初くらいの予定かな。

司会:インフレーションについてはどうだい?国債市場は今後10年間でのインフレ率を2.5%に設定して利率を計算しているよ。

Jeff:確かにインフレ率は上昇するだろうけど、今はリフレーションのポジションを維持するべきだと考えているよ。でも同時に、次の3つの観点から無視はできないリスクだとも考えている。1つ目は現在起きている需要と供給の混乱だ。これは現在だけでなく長く続くと思う。2つ目は賃金上昇圧力だ。今はまだこの傾向は見られていないけどこれから徐々に表面化してくると思う。3つ目はFEDのインフレ期待だ。FEDは今、意図的に金利上昇を遅らせるBehind The Curveという状態を保っているんだけど、実際のインフレ指数がFEDのインフレ期待値を大幅に超えたときに金利の上昇がみられるだろうね。

司会:世界経済が回復しているグッドニュースがある一方で、その世界経済は通常とは異なり全く先が読めない。この難しい世界経済の中で資産配分に気を遣わなければいけないのはバッドニュースだね。

考察

以上が二人の会話の内容でした。まとめると、①即リスクの引き下げ、②問題が起きた地点での景気回復兆候が見られた時点でのリスク引き上げ開始、③景気回復の起点となる事柄(今回ならワクチン接種)の把握とそれが積極的に行われている地域での投資拡大、④回復後の金利拡大に注意する、といったところでしょうか。投資細胞くん的には
中国で景気回復の兆しが見られたころにリスクを引き上げたというところが非常に勉強になりました。一番最初に暴落した地域を基にリスク引き上げ時期を計算するんですね。ではお待ちかね、最後にお勧め投資信託の発表です。

おすすめ投資信託

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Jeffによると、ヨーロッパ株式市場での成長は楽観的に見えるようなので、かなりリスクの高い投資信託をお勧めします。リスク・リターン分析では国際株式の平均をはるかに上回るポジショニングです(下図)。このファンドを資産の中に3~5%ほど組み込んでみてはいかがでしょうか?

翻訳協力:翻訳細胞くん_translator cell


*上記に含まれるコンテンツの一部はPodcast "Insights NOW"を和訳したものであり、情報提供のみを目的としております。また内容は作成時に入手可能な情報に基づくものあり、読者様の財務状況や投資目的を考慮しておらず、内容が適さない可能性があることにご留意ください。