米国経済_国債のお話

はじめに

Morgan Stanley, Global macro strategistのMatthew Hornbachが米国債10年の利率とドル指数の最近の動きについて話してくれましたので、今日は投資細胞くんと一緒にこれらの指標について見ていきましょう。

国債とは?

国債とはFixed income(利付き証券)の一種で、国が発行する債券のことです。発行時に償還期限と利率が定められており、購入した場合、これに応じた利息を受け取ることができます。償還期限を迎えると、元金である国債の発行時の金額が返ってくるため比較的リスクの低い金融商品です。

国債の利率

財務省ホームページによると、「国債(個人向け国債 、15年債(変動利付債)を除く)の金利(表面利率)は入札時の市場の実勢により決定され、償還まで変わ」らないとのことです。原則毎月発行される国債に対して、銀行や証券会社などが入札し、それにより利率が決まります。一般的には市中金利と連動すると言われています。すなわち中央銀行が指示する金利が低くなれば、国債の利率も低下します。(利回りとは異なりますので、より詳しく知りたい方はmanabow.comをご覧ください)

国債と通貨の関係

とっても単純にお話すると、投資家はより利率の高い国債を購入することでキャピタルゲインを得ることができるので、国債利率が高くなれば、海外からの国債購入が増加することでお金が国に流入し、その国の通貨の価値も上がります。一方で国債の利率が低下すれば、投資家はより利率のいい国債を発行している国の国債を購入するため資金が流出し、通貨の価値は減少します。

以上のことを踏まえて、最近の米国債10年の利率とドル指数についてのMattの話を聞いてみましょう。

対話スタート

司会:今朝見た通り、米国債10年の利率が最低水準に落ち込みました。一方でドル指数は2021年4月以来の最高値を示しました。今日はこれらのビッグムーブメントを引き起こしているものは何か話していきたいと思っています。ではMatt、早速債券市場から見ていきましょう。

Matt:利率がジェットコースターのように変化したね。2021年ファーストクォーターは1.0%から1.75%まで急激に上昇して、現在また1.25%まで落ち込んできているよ。これらのムーブメントを起こすのは、ポジショニングとフローだ。もちろんフローは毎日起こっているよ。でも一部の特別なフローがこういったビッグムーブメントを起こすことがあるんだ。今回のムーブメントの理由は2つある。1つ目はコロナ-デルタ株の流行が世界経済に与える影響を懸念していることだね。2つ目は、2021年9月に起きる失業手当の打ち切りだ。これまで政府から失業手当をもらっていた人たちは今後労働により民間企業から賃金をもらうことで生計を立てないといけないから、その移行がスムーズにいくのかどうか懸念しているね。

司会:Mattはずっとドルの価値が上がると予測していましたね。最近のドル指数の動きについてどう考えていますか?

Matt:2021年1月をベースにして考えると、国債利率が4月をピークに減少を続ける一方で、ドル指数は4月のピークの後6月に反発して4月と同程度の値を示しているね。私は以前から国債利率の増加とともにドルの価値が上昇すると考えていたので、予想とは違うけど、この結果は面白い。コロナへの懸念が高まっている中で、人々が米国の経済に期待していることの表れだね。今後国債利率が、ドル指数に追いつくように上がっていくと考えているよ。

司会:今日はありがとうMatt。

考察

まずは2021年における米国債10年の利率とドル指数のグラフを比較してみましょう。Mattの言う通り、国債利率は4月をピークに現在まで下降傾向にあり、ドル指数は7月を境に反発して上昇していたようです(下図)。金利が低下しているのにもかかわらず通貨の価値が上がるというのはどういうことなのでしょうか?

米国債10年の利率-2021
米10年物国債利率-2021
cnbc.comより引用)
ドル指数-2021
ドル指数-2021
cnbc.comより引用)

結論から言うと、Mattの言う通りアメリカの経済に対する期待から、米国株やETFが大量に買われていることが要因だと考えられます。他の通貨の価格変動要因である貿易収支を比較してみましょう。国の貿易収支が黒字の場合、その国の通貨が上昇する要因になります。WTO(World Trade Organization)が発表したグラフによると、North Americaの2021年の貿易収支はどちらかというと赤字に見えます(下図)。一方Asiaの貿易収支は2021年黒字に転じているようですね(下図)。これらのデータから、貿易収支が赤字にもかかわらず、米国内の金融商品がそれ以上に購入されていることがドル指数上昇の要因であると考察することができると考えています。

地域ごとの輸出(Export)及び輸入(Export)額の推移と予測
地域ごとの輸出(Export)及び輸入(Export)額の推移と予測
(wto.orgより引用)

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*上記のコンテンツの一部はPodcast "Thoughts on the market"を和訳したものであり、情報提供のみを目的としております。また内容は作成時に入手可能な情報に基づくものあり、読者様の財務状況や投資目的を考慮しておらず、内容が適さない可能性があることにご留意ください。