はじめに
Jackson holeでの会議において、パウエル議長が年内にテーパリングを開始することをほのめかしており、アメリカ経済だけでなく世界経済にどんな影響があるのか注目が集まっています。
今日は、Goldman SachsのChief EconomistであるJan Hatziusが、今後のアメリカ経済や世界経済をどのように予測しているのか聞いていきましょう。
スタート
司会:Jackson holeでの会議から得られたことや驚きは何ですか?
Yan:驚きは特になく、前回のFOMCで予想された通りのことが起きたと思うよ。大事なのは2点。1点目はテーパリングが今年中に始まる可能性が高いということで、これについては11月のFOMCで発表があるだろう。2点目はこれまで行ってきた資産購入の評価が慎重に行われており、それを9月に発表するだろうということだね。テーパリングはおそらく120億ドルの資産購入削減から始まり、来年の10月には資産購入をゼロにする予定だろうと予測しているよ。もちろん、失業率やインフレ率の値により左右されるだろうけどね。
司会:Janはアメリカ経済の成長期待を引き下げていましたが、なぜですか?
Jan:率直に言って、経済成長のピークは過ぎたからだね。これはGDPの値から見ても正当で、いくつかのクラスターが問題を抱えている。ワクチン接種をいくら推進してもオフィスに戻れる人は少数で、サービス業界の業績回復は予想を下回っている。ですが、今年政府が行った財政サポートのおかげで、2022年の第2四半期まではこれまでと同様の成長が期待できるかもしれないと考えているよ。
司会:アメリカ以外の経済成長についても予想を引き下げていましたね。その理由は何ですか?
Jan:まずはアジアについて。中国に特に注目しているんだけど、彼らはゼロ・コロナを目指してサービス業界に強い規制をかけているんだ。このためこのセクターの成長率はあまり期待できない。またコロナのアウトブレイクが南東のアジアで深刻な状態だ。
オーストラリアも同様で、ロックダウン状態になっているよ。
一方ヨーロッパでは、コロナ新規感染率は増えているけれど経済は順調に回復しているように見える。
このように、回復初期に見られた世界中の同時回復とは異なり、経済シチュエーションは世界中で異なっているね。
司会:その通りですね。世界全体で昨年の不況からのリバウンドが見られましたが、この傾向から今後のアメリカ経済や世界経済を予測できますか?
Jan:3つの地域に分けて考えると中国は、パンデミック以前の経済を取り戻しつつあるね。一方でアメリカの経済成長はGDPレベルで考えるとパンデミック以前よりも2~3%低い状態にあるかな。雇用の観点ではもう少し低いね。とはいえ他の大国は、それぞれのパンデミック以前の経済と比較して大幅に後れを取っています。ヨーロッパの国々も第三四半期に強い回復を見せていますが、パンデミック以前に追いつくとまでは行っていないからね。
司会:インフレについて聞かせてください。
Jan:インフレの予想を上方修正したよ。FOMCでも言われたように、2%程度のインフレが経済を健全に保つけれど最近は行き過ぎている。US375(1983年の$375を基準に現在のインフレ率を計算する方法)をベースにインフレを見てみると、目標の2.5%を上回り、現在5.67%だ。2022年には2%前後に落ち着くと予想しているよ。
司会:雇用に関する話題に移りましょう。連邦失業保険の給付により多くの労働者が雇用から締め出され、家にいるだけで労働と同じ金額をもらえる状態が続いていますが、今後の労働市場はどうなっていきますか?
Jan:週300ドルの失業手当は労働力の供給を引き下げた。パンデミック後に雇用が回復を見せたのは2021年6月が初めてだったね。今後も、一時的に雇用の減少が見られるかもしれないけれど、概ね順調に回復すると考えているよ。賃金も少しずつ伸びていくだろうね。
司会:これら全ての悪影響がコロナウイルスによってもたらされていますが、ウイルス以外のリスクは今後何かありますか?
Jan:ウイルス以外のことを話せる気がしないよ。現在ワクチンは変異株に対しても重症化を抑えることができると分かっているけれど、さらに危険な変異株が出てくる可能性も否定できない。今年中に世界人口の50%にワクチンを行きわたらせることが世界全体での目標になっているから、目標達成後の経済に注目だね。
司会:今日はありがとうJan。
考察
Janによると、テーパリングは2021年内に始まり、2022年10月には資産購入のゼロにするだろうとの予想でした。今日の考察では、テーパリングについてのおさらいと、テーパリングが経済に与える影響を見ていきましょう。
テーパリングとは、中央銀行制度による金融緩和を縮小すること
これまで米中央銀行制度は毎月1200億ドル相当の資産購入を続けることで、政府や国民にお金を供給し、コロナ対策を行ってきました。今後はこの資産購入を段階的に縮小して、お金をばらまくのを辞めていこうね。という作戦ですテーパリングは大規模な金融緩和の後に行われ、リーマンショック後の金融緩和ののち、2013年に初めて行われました。テーパリングを行わずに金融緩和を長期間続けると、ハイパーインフレーションやバブルにつながってしまうため、経済を刺激した後には必ず必要な措置です。
テーパリングは金利を上昇させる
テーパリングの開始と同時に金利が上昇します。これは金融緩和政策において購入されていた国債の購入額が減り、市場に出回る国債が増えることで国債利回りが改善することに起因します。テーパリングの開始と同時に起きる金利の上昇により、株式市場は信頼を失います。テーパリングの際に人々がパニックに陥り株式市場から退場する現象を"Taper Tantrum"といいます。"Taper Tantrum"に陥った際には、中央銀行は資産購入を再開するでしょう。
テーパリングの株価への影響は軽微
実際に2013年に行われたテーパリングが米国株価に与えた影響を見てみましょう。米中央銀行制度は2013年5月から8か月間にわたりテーパリングを行いました。以下の図を見てみると、テーパリング開始以降もS&P500は続伸していることがわかります。これにはいろいろな理由が挙げられますが、一つの理由として投資家がパニックに陥らなかったからだという説があります。投資家がパニックに陥り、保有株式を売り切り、市場から退場してしまう事態が起きると株価は大幅に下落してしまいます。一方で株式市場を信頼し、現在保有している株式を引き続き保有することで、株価の暴落を防ぐことができるのです。
テーパリングが始まってもパニックに陥らず、投資家全員で保有し続けることが自分の資産を守ることにつながります。未来を予測して良い投資ライフを。
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