米国経済 ESG投資のお話

はじめに

2021年11月初頭、COP26も始まり成長を重視した経済から、より持続性(Sustainability)を重視した経済を目指す機運が高まっている。投資家がSustainabilityを扶助するためにできる行動はESG投資です。

ESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のことです。ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つと言えます(大和証券Websiteより引用)。

ESG投資が注目される中、同時によく聞くようになった言葉がESGリスクです。一般的に、ESG評価の低い企業への投資は、ESGリスクの高い投資となります。

しかし、一体ESG投資を行ううえでどんなことを意識するべきなのか、ESG投資による社会への影響はどのようなものなのか、など疑問は尽きません。

そこで今日は、米モーニングスター, Global Director of Sustainability ResearchのHortense Bioyから、ESG投資家がとるべき2つの行動、DivestmentとEngagementについて、細胞くんと一緒に学んでいきましょう。

スタート

司会:私たちMorningstarではSustainabilityに対する投資として4つのアプローチをとっています。そのアプローチとは、①ESGリスクの高い企業をポートフォリオから排除することでリスクを避け、②ESGを徹底している企業を見つけ出し、③アクティブ・オーナーシップを行使し、株主として積極的に発言を行うことで、④その企業がESG目標を達成できるよう手助けするものです。

今日はGlobal Director of Sustainability ResearchのHortenseと一緒にESG投資における2つのアプローチ、DivestmentとEngagementについてお話していきたいと思います。Divestmentは直訳すると売却という意味で、ESGリスクの高い企業をポートフォリオから排除することに関連しており、Engagementは効果的なアクティブ・オーナーシップの発揮に関連しています。

これら2つの動きはESG投資において活発に行われており、特に企業活動による気候変動対策に関しては、株主総会で株主-企業間で熱い討論が繰り広げられています。Hoetense、何かコメントをいただけますか?

Hortense:はい。この動きは非常に活発で、すでに1,300の投資銀行が合計14兆ドルもの資産を売却しています。特に話題となったのは、New York pension fund (ニューヨーク州の年金機構) が40億ドルの石油関連資源を売却した事例ですね。

同様に、株主などの資産保有者はアクティブ・オーナーシップを行使し、企業のESG向上のためのアドバイスを行っています。今後この動きは地方経済にも波及していくでしょう。

司会:これらのアプローチの利点と欠点を伺いたいのですが、なぜ投資家はESGリスクの高い企業を売却したいのですか?

Hortense:いくつか理由があります。1つ目は倫理の問題です。環境への配慮を怠る企業へと投資することは、環境汚染を扶助することと同義となるために環境問題を憂慮する投資家にとっては自身の倫理に反する行為となります。

2つ目の狙いは企業の資本コストを上昇させることです。これにより企業は、環境に配慮しない設備投資をしづらくなります。

司会:財政的な面でのDivestmentにはどのような理由がありますか?

Hortense:今後ESGリスクの高い企業は資金の調達が難しくなっていくと予想されます。そのために投資家は、企業が財政難に陥る前に株式を売却することでリスクを避ける狙いがありますね。例えば石油関連企業は気候変動に寄与するリスクが高いために、Divestment運動の影響を大きく受けるでしょう。さらに投資家は、資本を売却して得た資金で、より利益の得られそうな企業へと投資を行うと予測できます。

司会:Divestmentに反対意見はあるのですか?リターンを無視したDivestmentが行われていると耳にしますが。

Hortense:もちろんです。投資をしていれば、新しく投資を行った企業の業績が、以前売却した企業よりも悪いということはいつでも起こり得ます。さらに起こりうる例を挙げておくと、例えば大手石油会社が、株式をあなたが売却したとたんに方針転換を行いLow-carbon economy(二酸化炭素の排出が少ない社会を目指す経済グループ)に参入する可能性だってあるわけです。

司会:Divestment運動は、実際に社会の利益につながっていますか?

Hortense:まだ始まったばかりですが、ESGリスクの高い企業の資本コストが上昇しつつあるという証拠が出てきています。一般的に資本コストを上昇させるためにはその企業の20%の株式をDivestmentしなければならないため、容易ではありません。

一方で、Divestment後に安価となった株式を他者が購入するために、Divestmentによる企業へのプレッシャーには意味がないという説を唱える人もいます。

司会:その場合は企業への出資を断ち切らずに、投資家がEngagementにより経営方針を転換させることが効果的ですね?

Hortense:その通りです。資産保有者が積極的に経営戦略に意見を出すことで、企業のESGリスクを引き下げることにつながります。Engagementにもいろいろな形があります。我々は、CEOに直接手紙を送ったり、同じ企業に投資している者同士で話し合ったり、役員とのミーティングを取りつけたりといった方法をとっています。

司会:良いEngagementの例とはどういったものですか?

Hortense:最も重要なことは、資産保有者が、企業が達成可能な目標を段階的に設定し、かつその目標が測定可能であることですね。例えば企業が目標を達成できなかった場合、資産保有者は役員に対し不信任を申し立てることで、経営陣にてこ入れをすることができます。この戦略が最も取られていますね。

司会:不信任の申し立ては強力な武器ですが、それが有効でなかった場合はどうするのですか?

Hortense:その時はDivestmentを行いましょう。Divestmentの恐れがあるためにEngagementは効果を発揮できるのです。DivestmentとEngagementの間には優劣があるわけではなく、相互に補強し合う関係を持っています。

司会:今日はありがとうHortense。

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saibou

Morning Star investing insight

*上記のコンテンツの一部はPodcast "Investing Insights"を和訳したものであり、情報提供のみを目的としております。また内容は作成時に入手可能な情報に基づくものあり、読者様の財務状況や投資目的を考慮しておらず、内容が適さない可能性があることにご留意ください。