はじめに
Morgan StanleyのChief U. S. economistのEllen Zentnerが米国経済の今後の展望に関する質問に答えてくれました。今回の内容は続編です。連載1回目はコチラ!
Q 労働市場の変化が物価に与える影響は?
上昇するでしょう。しかしこれは、より複雑な理由によるものです。労働者が戻るにつれて、企業は人々にお金を払わなければなりません。現在の人件費、賃金、雇用コスト指数データを見ると、雇用の創出は現在特に低賃金のセグメントから埋まっています。すなわち今後の、マージン圧力はより強いものとなると予想され、企業はそれをより高い物価という形で消費者に転嫁しなければなりません。この値上げは高い人件費を支払う為です。しかし労働者が望むより多くの賃金は、彼らが費やす金額よりも多い収入であり、すなわちそれは経済における総需要をこえる賃金となります。この賃金を消費に回してもらうためにFedは物価をあげることを考えなければなりません。
Q Fedはそれらのデータどう考えていますか?またいつ頃金利を引き上げますか?
現在、Fedは、これらの価格圧力のほとんどは一時的なものであると考えているため、しばらくは現在の高いインフレ率を維持するでしょう。もう一つの理由は、失業率を低下させるためです。インフレ率と失業率は反比例するために、失業率を引き下げるためには高いインフレ率を維持しなければなりません。失業率が目標の値を達成するまでFedは金利を引き上げることはしないでしょう。またこれはFedにとっては望ましい事態です。皆さんご存知のように彼らの鶴の一声で景気は減退します。一方で彼らは景気を好転させることは得意ではないのです。そのため、暴走する高いインフレ率が定着しまうリスクを冒してでも失業率を引き下げようとすると考えられます。しかし注意も必要です。4月のFOMCで彼らの多くは価格圧力の先細りについて話し合うべきであるという考えを支持し始めており、アクセルペダルから足を離す段階に入ろうとしています。9月の会議ではそのことに関するガイダンスが発表される見通しです。
Q リーマンショックからの景気回復とコロナショックからの回復の相違点は何ですか?
前回の金融危機において、我々が完全には理解していなかったことが2つあると思います。1つ目は、サブプライムローンでの住宅購入者のレバレッジ解消に予想以上の時間がかかるということでした。2つ目は、その不況がどれほど深く、長くなるかについての誤解でした。特に2010年に起こったことを考えてみてください。2008年にサブプライムローンによって購入された住宅は、2010年に持ち主を失いました。そのため、住宅価格がまだ下がっているにもかかわらず、政府は何百万もの住宅の購入を促さなければなりませんでした。その際、住宅購入者の税額控除に対して多額の税金を支払う必要がありました。Fedはこの誤りを教訓とし、コロナショックからの回復においては適切タイミングで十分な金額の財政支援を行っていると我々は考えています。
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