はじめに

Morgan Stanley, chief US economistEllen ZentnerとGlobal macro strategistのMatthew Hornbach今後の米国長期金利について語ってくれましたので、今日は投資細胞くんと一緒に今後の長期金利を予想してみましょう。

長期金利ってなぜ大事?

長期金利を考えることがなぜ大事かというと、上昇または減少が国の経済にダイレクトに影響するからです。それぞれの地方銀行は、国の中央銀行が定める金利でお金を借り、その借りたお金を企業や個人に貸し出します。当然、金利が上がった場合お金をあまり借りたくはありませんよね?それにより企業が自由に使えるお金は減り、結果として企業の業績はセーブされることになります。

長期金利上昇または下降のメリットは?

上昇によりインフレーションを抑制することができます。下降により経済を回復させることができます。2021年現在、心配しなければならないのは長期金利の上昇です。米国ではコロナにより大きな打撃を受けた経済を回復させることに集中しているために、2021年4月の月間インフレ率が過去最高の4.2%を記録しました(驚異のインフレ率4.2%)。主要な米国経済指標であるS&P500やNYダウも軒並み高騰し、経済の過熱が見受けられます。このため、投資家はこの行き過ぎた経済に、いつ歯止めがかかるか予想しなくてはなりません。

長期金利はどのようにして決まるのか?

米国における長期金利は、1年に8回行われるFOMC(Federal Open Market Committeeでの会議をもとに、米国中央銀行制度であるFedが実際の長期金利を決定します。最近のFOMCは2021年6月15-16日に行われました。この会議で多くの委員たちは、2023年までに段階的に長期金利を上昇させることを希望・予測しました。

Fedがコロナ禍で行ってきた金融政策は?

Fedはこれまで、毎月1200億ドルの債券購入を行い、長期金利を低く保つことで米国経済を刺激し続けてきました。そのおかげで経済回復が見られましたが、現在はいささか過熱傾向が強いようです。そのため多くの投資家は、Fedがこの行き過ぎた経済に待ったをかけると確信を持っています。それはいつになるのでしょうか?Morning Stanleyの専門家たちの会話からその時期を予想してみましょう。

対話スタート

Matthew:今回のFOMCでは長期金利の上昇と、債券購入の縮小(テーパリング)についての発表がメインだったね。まずはテーパリングについてEllenの考えを教えてくれないかい?

Ellen:下のグラフを見てもらえると分かるように、コロナ感染症の拡大に伴う景気減退に対する対策としてFedは毎月1200億ドルもの債券購入を続けてきました。Fedは常に、これをいつまで続けるか考えなければなりません。現状フォーカスするべき3つの点は、高い失業率8%と予想される高GDP成長(2019年は2.16%)、そして消費の安定です。これらを踏まえたうえでFedは債券購入という経済に対するアクセルから足を緩めることを選択するでしょう。これは、企業に対する信頼性が増えたことを示しているので、悪いニュースではありません。

米中央銀行制度(FRB)が保有する資産の合計額
米中央銀行制度(Fed)が保有する資産の合計額

Matthew:それらのタイムラインはどうなると予測しているんだい?

Ellen:まず7月のFOMCで議論が行われるでしょう。そして9月のFOMCでは、①いつテーパリングを始めることができるのか、②テーパリングを始める根拠となった指標は何か、③テーパリングの規模や④期間などについての実際のガイドラインが示されると予想しています。いずれにせよこれらが発表されれば、米国経済は肩を竦めることになることは間違いありません。

Matthew:次はFOMCで議論された長期金利について話してもらえないかい?

Ellen:2021年6月に行われたFOMCでは下の図のように、2021年の内は18人全員が最低利率を合理的だと判断しています。一方で2022年6月では8人が、2023年6月の時点では12人が現在よりも高い利率を合理的だと判断しました。ただしこれは、子供が持って帰ってきた宿題と同じものだと考えてください。この表から長期金利を計算するわけではないからです。Fedがこの表や他の経済指標を考慮した上で、長期金利を決定します。所詮この表はFedを悩ませるモノの一部でしかないのです。


Matthew:最後に現在のインフレが一時的なものであるか、持続的なものであるか意見をくれないかい?

Ellen:間違いなく一時的なものです。ホテル、レジャー、ホスピタリティ、レストラン、航空会社、新・中古自動車業界はモビリティセクターに含まれ、非常にインフレの影響を受けやすいと言われています。現在これらのすべての業界において、サービス側のキャパシティをはるかに超える需要が発生しています。これらが強いインフレ圧力を生み出していることは明らかです。一方で我々は、これが一時的ではない可能性も考えておかなければなりません。そのためには、継続的にCPI等のインフレ圧力に関連する指数を観察しましょう。これらの値が数ヶ月おきに下がっているようなら、現在のインフレは一時的なものであったということです。下がらなかった場合は、Fedはこれを持続的なインフレであると判断し、経済縮小の実施を早めることでしょう。

Ellen:Economistの私は上で述べた通り7月に議論が行われて、9月にガイダンスが発表されると考えており、実際にテーパリングが行われるのは来年の3月か4月だと予想しています。このタイムラインは市場にどのようなインパクトを与えると予想しますか?

Matthew:私や私の周りの投資家はEllenの予想よりも少し早いタイムラインでテーパリングが行われると考えているよ。多くは9月にガイダンスが発表されて、1月に実施が開始されると期待しているね。でも僕の予想では、Fedが2022年12月に長期金利を上昇させることを視野に入れて、10月にテーパリングが実施される可能性もあると考えている。テーパリングを早期に初めて、2022年6月に終わらせることで金利上昇まで6ヶ月のバッファー期間を設置するためにね。だから、Ellenの予想通り3月か4月に縮小が始まったとしても市場はさほど驚かないと考えているよ。

考察

今後はインフレ指標を注視する必要がありそうですね。下の図の通り、インフレ率は3月から急激に上昇しており、2021年5月では4月に比べて5%上昇しています。これが続く場合はテーパリングの開始、また長期金利の増加を視野に入れた資産運用を心がけなくてはなりませんね。長期金利が上昇することがわかっている局面では、不動産や自動車の駆け込み需要が上昇することがわかっています。金利が上昇してから高価なものをローンで買うのはもったいないですからね。また、低金利の際に購入した債権の価値が低下します。もちろん企業の成長の鈍化も見られることでしょう。債券や株式の配分が高い方はその一部を不動産に一時的に回した方がいいかもしれません。

米国における消費者物価指数CPI

米国における消費者物価指数CPI

TRADING ECONOMICSより引用)

ツイッターをフォローして最新情報を受け取る


Designed by FreePik

*上記のコンテンツの一部はPodcast "Thoughts on the market"を和訳したものであり、情報提供のみを目的としております。また内容は作成時に入手可能な情報に基づくものあり、読者様の財務状況や投資目的を考慮しておらず、内容が適さない可能性があることにご留意ください。