はじめに
第四四半期に入り、2021年も残り4か月をきりました。4兆ドルのインフラ投資が承認目前のアメリカですが、一方で増税などのネガティブ政治イベントも同様に控えています。
政治と経済は密接にかかわっている
当然ですが、政治と経済は密接なかかわりを持ちます。2020年に発生したコロナウイルスの感染爆発に対する各国政府の対応は、そのまま国家の経済に反映されました。現在もその流れは続いており、政府がワクチン接種を素早く推進した国家の経済指数は急上昇しています(参照:【コロナ感染症】デルタ株が世界経済に与える影響…)。
これらは政治が経済にポジティブな影響を与えた例ですが、第四四半期においては、政治がネガティブな影響を与えるのではないかと心配されています。
今日はアメリカにおいて予測されるネガティブなイベントと、それらが米国経済に与える影響を、Morgan Stanley、Managing Director, Head of U.S. Public Policy Research & Municipal Credit StrategyのMichael Zezusから学んでいきましょう。
スタート
Michael:今日は今後のアメリカ合衆国における地政学に関連するトピックを3つ話していきたいと思っています。一つ目はバイデン政権がプッシュする10年間で4兆円の新規支出について。二つ目は増税。三つ目は中国との関係についてです。
10年間で4兆ドルのインフラ投資を目指すプランはおそらく第4四半期の間(10-12月)に承認されると我々は予想していますが、ちょっとしたドラマが起きているはずです。なぜならこの投資プランの承認により予想される赤字成長を見た目上相殺しなければならないからです。
政府が期待している相殺のためのアイディアは国債利回りの上昇と増税による税収の増加です。
この秋にコロナ感染症の発生が落ち着けば、FRBのテーパリングが始まることでインフレが減速し、国債の価値が元に戻ることで利回りが安定すると政府は予測しています。
増税はホワイトハウスの目論見通りには行われないでしょう。ホワイトハウスは法人税を28%にすると宣言していますが、我々はこの宣言が25%前後に引き下げられると予想しています。なぜなら議会で承認されやすいからです。増税率の低下は赤字拡大を意味しますが、それでも”増税率の低下”の方が多くの国民にとって口当たりの良い選択肢になるでしょう。調査によると有権者は財政赤字にあまり興味を示さないようですからね。
最後に扱いたい問題が、中国との対立です。中国は2020年1月にトランプ政権と最低2000億ドルの対米輸入を行うことに合意しましたが、そのペースが遅れています。一方でアメリカは未だにコロナウイルスの起源は中国ではないかと疑っています。
アメリカ国内の有権者の多くが中国に懐疑的であるということからも、政府はこの追及を緩めるつもりはないでしょう。
すなわちアメリカと中国の溝はより深いものになり、相互ビジネスにおける非関税的なルールが変更される恐れがあります。現在予測されている変化は、顧客収集データに関するものです。中国から顧客収集データが得られなくなった場合、テック企業だけでなく、自動車関連企業などのビジネス戦略に支障が出ることは間違いありません。
考察
Michelが興味深い経済情報を聞かせてくれました。今日は、増税と財政赤字について考察していきたいと思います。
そもそも目指す増収は3.5兆ドル
アメリカ政府は増税によって増えた税収を、財政赤字回復とインフラ投資のための財源とするたくらみのようですが、そもそも目指す増収は今後10年で3.5兆ドルだと言われています。インフラ投資は今後10年で4兆ドルの支出となる予定ですから、そもそも増税だけでは賄えない金額の支出を予定していることになります。同時にコロナ感染症対策により、2021年の財政赤字は2.5兆ドルにも上っていることを踏まえると、国家の財政赤字が回復する可能性は無いに等しいでしょう。
しかし、そんなに悲観することはありません。Michelが言うように国民はあまり国家の財政赤字に興味はないようですし、また、前記事(2022年の米国経済の先行きは…)で紹介したように、財政赤字は経済の成長を緩やかにするだけで、成長を止めるわけではありません。増税に関しては経済成長にほぼ影響を与えません。すなわち、米国株を手放すにはまだ早いと言えます。
1ドルの増税により国家は1.59ドルの追加支出を行う
The 1.59 studyをご存知ですか?1947年から1990年までのアメリカ国内における増税の歴史を研究した結果、1ドル増税すると国家支出が1.59ドル増えるということがわかりました。しかも、赤字回復を銘打っているのに、赤字が増加するというものです。
この研究結果が示した結論は、増えた税収は、そのまま各細目の支出の増加につながるだけであるため、政府は増税よりも支出の制約に時間をかけるべきだというものでした。
以上のことにより、今後最低でも10年は財政赤字を保持したまま、緩やかに経済が成長していく米国の姿が見えてきたかと思います。
信用するならS&P500を追加購入。できないのなら他国の経済へ。あなたはどうする?
↓

Designed by FreePik
*上記のコンテンツの一部はPodcast "Thoughts on the market"を和訳したものであり、情報提供のみを目的としております。また内容は作成時に入手可能な情報に基づくものあり、読者様の財務状況や投資目的を考慮しておらず、内容が適さない可能性があることにご留意ください。


コメントを投稿
コメントを投稿