コロナ感染症オミクロン株のお話

はじめに

11月22日に初めてアメリカ国内での感染者が報告されたコロナウイルス・オミクロン株。巷では猛威を振るっていますが実際の危険性はどうなのでしょうか?また経済に与える影響はどのようなものなのでしょうか?

今日はMorgan StanleyのBiotechnology AnalystであるMatthew Harrisonから、オミクロン株について現在分かっていることを学んでいきましょう。

スタート

司会:Thanksgiving weekの間にオミクロン株が流行しはじめましたが、オミクロン株はどうしてこんなにも注目を浴びているのですか?

Matt:オミクロン株に起きている変異が、ワクチンの有効性に影響を与える可能性があるからです。最初に発見されたコロナウイルスと、オミクロン株の遺伝子を比較すると、実に50の遺伝子に変異が起きていることが分かりました。そのうち32個の遺伝子はウイルス表面に存在するスパイクタンパク質に起きていました。

スパイクタンパク質は、ワクチンによって産生される抗体が、コロナウイルスを認識する部位です。このためスパイクタンパク質が変異すると、せっかくのワクチン接種により体内で産生された抗体が、オミクロン株を認識できずに、好き勝手に増殖できてしまう事態が引き起こされます。

しかしこれらの変異はアルファ、ベータ、デルタ株にも発見されている変異で、以前記事に記載したように既存のワクチンはこれらの変異株に対しても有効(参照:【コロナ感染症】デルタ株流行が世界経済に...)でしたので、オミクロン株にも有効である可能性はあります。

司会:限られた情報の中で、現在オミクロン株についてわかっていることは何ですか?

Matt:まずは伝達性ですね。今後このオミクロン株への感染者数がデルタ株の感染者数を超えた際には、ワクチン回避性や致死性が問題となります。オミクロン株の伝達性がデルタ株より低い場合は、最終的にはデルタ株が蔓延することになるのでそこまで大きな問題にはならないでしょう。デルタ株に対してはワクチンの有効性も示されていますからね。

実際の伝達性についてですが、2つの情報が得られています。1つ目はDNAシークエンスにより得られた情報で、サウスアフリカの一部地域ではデルタ株よりもオミクロン株が優位に検出されているということです。これはオミクロン株の伝達性がオミクロン株より優れているという証拠の一部になりますが、あくまで一部地域から得られた結果で、広範なエリアを対象にしているわけではないので引き続き精査が必要です。

2つ目はPCRテストによる結果です。DNAシークエンスより精度は劣りますが、PCRによってもオミクロン株を同定することができます。日々行われているPCR検査の結果、オミクロン株が徐々に増えてきていることが分かってきているようです。現在はオミクロン株がデルタ株と比べてどれほどの早さで流行していくのか見守っている状態ですね。

司会:オミクロン株に対するワクチンの有効性が疑問視されている理由について詳しく教えてもらえますか?

Matt:まずワクチンの有効性をどのように調べるか話しましょう。ワクチンの有効性を調べるには最低でも2週間かかります。オミクロン株の感染者からウイルスと血液を採取し、血液中の抗体の量をまず調べなければなりません。コロナウイルスに対する抗体が十分に産生されていた場合、その抗体とオミクロン株を混合してウイルス殺傷性がどの程度あるのか測定することで、オミクロン株に対するワクチン有効性を同定することができます。

次にワクチンの有効性が疑問視されている理由ですが、主な理由は先ほども言ったように50もの遺伝子変異です。この変異の中にはベータ株に見られた変異と同じものがありました。ベータ株に対してはワクチン有効性が他の株の約6分の1しかないため、オミクロン株に対してもワクチン有効性が低いのではないかと予測されています。

オミクロン株は、ベータ株や他の変異株で知られている遺伝子以外にも変異遺伝子を持つために、より慎重にその危険性が議論されていますね。

司会:重病化に関する議論はどうなっていますか?

Matt:まだ断言できることはありません。その一方で、研究に基づかない一般人の感想やうわさが錯綜して世間が困惑しているのが現状です。オミクロン株が他の株より感染者を重病化させるかどうか調べるには最低でも4~5週間かかるでしょう。南アフリカでは確かにコロナ感染者が増えていますが、全ての感染がオミクロン株に引き起こされているかどうかは分かりませんからね。

オミクロン株感染者に対して(他の変異株には有効だった)抗体療法を試したが、効果がなかったという事例も出てきています。しかし他の経口摂取できる薬の開発も進んでいますし、2年前のパンデミックが再開するようなことにはならないと予測しています。

司会:最後に、オミクロン株の出現が中~長期でマーケットに与える影響を教えてください。

Matt:今のところオミクロン株の出現が経済成長に影響を与える明確な証拠は出てきていませんね。デルタ株の流行が起きた際にも特に大きな影響は見られませんでしたから。

司会:今日はありがとうMatt。

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saibou
Though on the market

*上記のコンテンツの一部はPodcast "Though on the market"を和訳したものであり、情報提供のみを目的としております。また内容は作成時に入手可能な情報に基づくものあり、読者様の財務状況や投資目的を考慮しておらず、内容が適さない可能性があることにご留意ください。