世界経済深刻な供給不足。回復のカギは運送業


はじめに

2022年1月27日のFOMCでは利上げが行われず(参照:ビジネス短信)に、投資家の皆さんはほっと一安心というところでしょうか?

ですがそう、うかうかもしていられません。利上げをしなかった一方でテーパリングの終了を2022年3月に前倒しすることを決定しました。

というのもコロナ禍で行った大規模な金融緩和政策に伴うインフレーションが止まらないからです。

インフレーションをけん引する大きな要因は、人々の商品・サービスに対する需要に対して、その供給が不足していること。

商品の供給とは、製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れ(サプライチェーン)により行われます。

ではこのサプライチェーンのうち、

  • 需要の増大に最もストレスを受けているのはどのパートなのか?
  • それを解決する方法はあるのか?
  • 政府の対応はどうなっているのか?
今日はこれらの疑問に対する答えを、Morgan StanleyのAsia and Emerging Market Equity StrategistであるDaniel Blakeに聞いていきましょう。

スタート

司会:現在サプライチェーンが抱える問題について概要を説明してもらえますか?

Daniel:世界が今直面している問題は商品に対する需要の急増です。特に米国マーケットからの需要が爆発的に増加しています。

第二次世界大戦以降からこの傾向は顕著でしたが、コロナ禍で問題が一気に露見しました。コロナ感染症の拡大直後の2020年7月(117億5600万ドル)と2021年10月(137億2300万ドル)の間に、米国消費者支出は約17%増加しています(下図)。


現在起きている支出の増加は、サプライチェーンに多大なるストレスを与えています。

需要の急増に加えて、東南アジアでのコロナ対策による人員配置転換により、半導体デバイスの供給は深刻なダメージを受けています。

つまりおおもとの原因は、消費者に直面している末端の企業が商品の必要性の有無にかかわらず、追加注文をバンバン出していることです。そのためにシステムのストレスが増大し、潜在的な需要のありかについて、誰も分からなくなってしまっています。

司会:需要の爆発的増加によるインフレーションに対する政策立案者の反応はどうですか?

Daniel:この大きな変化には前例がないので、もちろん政策立案者たちがすぐに利用できるような対応ツールはありません。

実際にとられた政策の1つは、海外から米国への商品輸入をよりスムーズにすることを目的として、港湾労働者や輸送労働者への残業代を増やした程度のことです。

包括的な対策は未だとられていません。

司会:アジアなどの発展途上国における政府の対応はどうなっていますか?

Daniel:金融引き締め政策が早くにとられていますね。2021年第4四半期にはアジアの70%の地域で金利の値上げが行われています。

司会:サプライチェーンが抱えるこれらの問題が解決する見通しはありますか?

Daniel:一部の分野では改善されつつあります。例えば、東南アジアにおける半導体製造がフル稼働で行えるようになってきています。このため最も深刻であった半導体の供給不足が回復に向かいつつあります。

しかし、米国におけるトラック輸送で見られる労働者不足を解決するには、まだ投資と時間が足りておらず、輸送コストの上昇や輸送の遅延などが引き続き課題となります。

加えて、電気自動車の部品やバッテリーの需要は、米国の政策の一環(参照:【環境問題】地球温暖化がアメリカ経済に与える…)で今後持続的に増加していくことが予想されます。供給不足となることを避けるためには、政府による早期投資が望ましいと考えています。

司会:そのことも踏まえて、我々のチームは2022年の第1~第2四半期においてインフレーション圧力が緩和すると予想しています。つまりFedは、必ずしもタイトに利上げを行わなくてもいいのではないかと考えています。

Daniel、投資家たちが今年注意を払うべきポイントを教えてください。

Daniel:米国だけでなく、世界の政策立案者の決定に目を向けるべきです。現在世界経済は多極化しています。複数の経済的支柱が立っており、それぞれが貿易、技術、そして供給において異なる戦略を追及している状態ですね。

米国と中国が良い例ですね。ここ数年両者は、経済そして国家保証安全上、自国が最も利益を得られる経済政策を他国に強いています。

例えば米国は、2018年と2019年に関税を引き上げましたね(参照:Tax Foundation)。輸出制限などの非関税障壁も引き上げ、より攻撃的な政策を行っています。

ここで注意しなければならないのは、今まで世界経済のグローバル化の恩恵を受けていた企業は、貿易摩擦の影響に直面するということです。

増加する貿易コストの取り扱いを間違えれば、マージンは食い尽くされてしまいます。

(略)

司会:今日はありがとう、Daniel

ツイッターをフォローして最新情報を受け取る

saibou

Thoughs on the market

*上記のコンテンツの一部はPodcast "Thoughts on the market"を和訳したものであり、情報提供のみを目的としております。また内容は作成時に入手可能な情報に基づくものあり、読者様の財務状況や投資目的を考慮しておらず、内容が適さない可能性があることにご留意ください。