【米国経済】ネットゼロ運動は産業革命!?投資家が注目すべき3つの議論

はじめに

2021年は持続可能な社会への資金流入が非常に多いビッグイヤーとなりました。

持続可能な社会に関連した投資信託の純資産額の合計の推移を見てみると、2018年10月までは9,000億ドルであった総資産額が2021年から急増し、2021年7月には3,900兆ドルに達しました(下図)

持続可能な社会に関する投資信託の総資産額の推移
持続可能な社会への投資金額
Y軸:単位十億ドル
Morningstarより引用

これはまさしく世界中の投資家が持続可能な社会に興味を持っていることの証ですが、この流行はいつまで続くのでしょうか?

それを知るために、今日は持続可能な社会への投資に関して、米Morningstarの外部顧問であるSustaianalyticsのCEO、Michael Jantziに話を聞いていきましょう。

スタート

司会:2021年はCOP26も開催され、世界各国が気候変動への対策に躍起になっていましたね。同時に持続可能な社会を目指す投資信託やETFへの資金流入が急増しました。2022年はどのような年になりますか?

Michael:気候変動が引き続きアジェンダに居座り続けてくれるといいのですが。

というのも、気候変動に関する議論というのは、持続可能な社会を築くための他のファクターに関する議論に波及しやすいからです。

これは昨年11月にスコットランド・グラスゴーで行われたCOP26において、気候変動と森林破壊や生物多様性の減少の関連についての議論があったことからも明らかです。

さらに問題なのは、発展途上国への深刻な悪影響です。先進国が原因で起きている気候変動のリスクを発展途上国が担っているという不平等に関する議論はさらに深まっていくでしょう。

COP26では気候変動が人体に与える影響にまで議論が波及していました。

以上のことから、気候変動への関心が続くことが、持続可能な社会を発展させるために重要なことになります。

司会:地球上の二酸化炭素排出量と、二酸化炭素の吸収量を同じにして、これ以上の二酸化炭素の蓄積をゼロにするネットゼロ運動が、もはや企業活動の原則となっています。

投資家はなぜこの動きを注目しているのですか?

Michael:なぜならこれは産業革命に近い事象だからです。

ネットゼロ運動は単なる二酸化炭素排出防止に関する議論に留まらず、より深みを増していき、世界のあり方に関する議論となっていきます。

その結果、経済システムを根本的に変えなければならないとの結論に至ると私は考えています。

全てのビジネスモデルが変わる可能性がある。だから投資家はネットゼロ運動を注視しなければいけません。

ネットゼロ運動が加速するにつれて、その流れに適応できた企業は勝者となり、できなかった企業は敗者になります。ここには投資機会が眠っていますよね?

これが、多くの投資家がネットゼロ運動に注目している要因です。

司会:リスクはどこにありますか?

Michael:すべてがリスクであり、チャンスです。

まず、石油や天然ガスなどの炭化水素を多用する企業は今後10~15年以内に再生可能エネルギーへの移行の動きを見せると予想しています。

このタイミングで、風力、太陽光、グリーン水素発電に関するイノベーションが起きるかもしれません。

ぜひ投資家にはこの分野をテーマに入れておいてほしいですね。

司会:今後はどのような議論が起きると予想されますか?

Michael:投資家同士での議論に着目すると

  • 2022年以降の産業革命にどう取り組むべきなのか?
  • 産業革命を予想した時に 現在のポートフォリオに含まれているリスクは何なのか?
  • 産業革命を自分のチャンスにするための投資先はどこなのか?

これらが重要な議論になっていくでしょう。

さらに興味深いのは、今も昔も投資家は同じことを言っていることです。

ヨーロッパで気候変動に関する問題が投資家の間で話題になった際彼らは

「Engagement(企業に働きかけて炭化水素使用を辞めさせる運動)よりDivestment(炭化水素を使用している企業の株式を売却する)を行うだけだ」

といっています(詳しく知りたい方は前記事→【米国経済】ESG投資とは?を参照してください)。

昨年からアメリカでも気候変動に関する問題が話題になっていますが、彼らも

「今後数年間で化石燃料生産企業の株を売却するだろう」

といっており、これはすなわちEngagementがそれほど効果的ではないことを示しています。

おそらく彼らは、株式を売却した資金で新たな投資先を見つけるでしょう。

一方でEngagementに踏み出す例もあります。昨年カリフォルニアの年金機構であるCalSTRSEngine No. 1と共にExxonMobilと連携して気候変動対策に乗り出すことを発表しました。

成功するのはDivestmentでしょうか?はたまたEngagementなのでしょうか?

以上のことから、今後はどのようにリスクを避け、どのようにチャンスを得るかが機関投資家の間で議題となるでしょう。

司会:持続可能な社会へと向けたこれらの動きは個人投資家の間でも見られていますか?

Michael:もちろんです。Morningstarの調査では、富裕層の個人投資家の関心の高まりが伺えます。

四半期ごとにこれまで前例のない水準の金額が、持続可能な社会への投資に回っています。

そして忘れないでほしいのが、機関投資家は、個人投資家からのお金を運用させてもらっているのです。

もちろんあなたも年金機構のメンバーですよね?

皆さんが我々機関投資家の基盤ですので、個人と機関投資家の間には強い結びつきがあります。

そして、個人は自らの投資の結果や影響に興味があるため、個人の持続可能な社会への関心は継続していくことでしょう。

したがって機関投資家は長期的な経済成長のために今後も引き続き持続可能な社会への投資を続けていきます。

個人もこの動きが地球のためになることを理解しつつあるので、来年以降は、気候変動だけでなく、環境問題や社会問題に関しても議題になることでしょう。

司会:今日はありがとうございました。

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saibou

*上記のコンテンツの一部はPodcast "Investing Insights"を和訳したものであり、情報提供のみを目的としております。また内容は作成時に入手可能な情報に基づくものあり、読者様の財務状況や投資目的を考慮しておらず、内容が適さない可能性があることにご留意ください。