ポートフォリオチェックの仕方

はじめに

Morningstar, director of personal financeChristine Benzがハンズフリーポートフォリオの、半期に1度のチェックアップについて話してくれました。投資細胞くんと一緒に手放し投資術を身につけて、未来に備えましょう。

ハンズフリーポートフォリオとは?

以前のブログでも紹介した(ズボラさん必見!ハンズフリーポートフォリオでらくらく資産運用)、資産への干渉を最小限に抑えながら、資産を増やすためのアイディアです。投資細胞くんがおすすめするハンズフリーポートフォリオは、①米国株式全体、②国際株式全体、そして③国際債券全体の3つのアセットクラスへの分散投資が基礎となります。①~③の保有割合は自身が蓄積期にあるのか、または引出期にいるのかで変化させます。

蓄積期と引出期ってなに?

蓄積期とは、現役で仕事を行い定期的に収入があり資産を蓄積させる時期のことです。引出期とは、蓄積期に蓄積した資産を退職後に引き出している期間のことです。蓄積期はFIREへの準備段階で、引出期はFIRE後と言い換えると分かりやすいかもしれません。

理想の保有割合はどれくらい?

退職がまだ遠い20~30代の人たちの株式への暴露率は85%以上です。そこから退職が近づくにつれて徐々に株式の保有割合を引き下げて、債券の保有割合を上げていきましょう(下図)。ハイリスクハイリターンの株式から、ローリスクの債券に徐々に切り替えることにより、蓄積期に増加した資産を守りながら引出期に入っていくことができます。

ポートフォリオの暴露率の変化

ポートフォリオの暴露率の変化

ハンズフリーポートフォリオのチェック頻度

1年に1~2度で十分です。というのも、ハンズフリーポートフォリオは長い期間をかけて成長していくからです。あまり高頻度でチェックしていると、投資家の行動バイアスがかかってしまいます。株式の含み損を確認してしまうと損切りしたくなってしまいますよね。逆に、株式が莫大な含み益を持っていた時は利確したくなります。これらのバイアスを極力減らすことで資産を増やしていくのがハンズフリーポートフォリオの神髄であるため、極力触らずに運用しましょう(矛盾)。

さて、現在2021年も半分が終わりました。今はポートフォリオをチェックするには絶好のタイミングです。司会とChristine Benzの対話から、ポートフォリオチェックアップで何をするべきなのか聞いていきましょう。最後におすすめETFも紹介しているのでぜひ最後まで読んでいってください。

対話スタート

司会:まず半期に一度のポートフォリオチェックアップで行うことは何ですか?

Christine:ポートフォリオを見る前にまずはあなたの貯蓄率を見ていきましょう。蓄積期にいる人は、毎月可能な最大限の貯蓄を行っているか、非課税投資枠を最大まで利用しているかチェックしてください。一方で引出期にいる人たちは、2021年前半での支出と残りの資産額に注目して、後半の支出ペースを再確認しましょう。それからポートフォリオをチェックしていきます。まずは、大まかな資産配分(アセットアロケーション)を確認してください。次にそれぞれの金融商品に着目していきます。投資信託やETFを持っている方はそれらをセクターごとに振り分けてください。また個別株を持っている方も、保持している株式がどのセクターに分類されるのか同定し、振り分けてください。最後にセクターごとの暴露率を確認し、自分の方針と合致しているか確認していきましょう。

司会:今年注意すべき点に着目していきましょう。まずインフレ対策は必要ですか(参照:驚異のインフレ率4.5%...)?

Christine:年齢によります。まだ若く、毎月の収入がある方たちには高い株式保有率を進めているため、インフレが株価を上昇させる可能性が高いです。一方で引出期に入っている退職者たちのポートフォリオはインフレから保護されてない場合がほとんどです。対策として、株式の保有率を上げたり、インフレ連動債の購入を検討するべきでしょう。優れた投資家の退職が近づいてきた時期のポートフォリオには、25%ほど債権が含まれているので、これを指標にしてみてください。

司会:最近のインフレ懸念を受けてコモディティの価格が上昇していますが、インフレ対策としてコモディティを取り入れるのはアリですか?

Christine:確かにコモディティに関連する商品はここ数年で、50%またはそれ以上の成長を見せています。ただしこれはコモディティが株式市場に後れを取り、債券市場に後れを取り、すなわち目に見えるすべてのものに後れを取っているだけだと私は考えています。インフレ対策としてコモディティを購入するということは、あなたの重要な購買力を価格変動のより少ないコモディティに費やすということであり、タイミングを間違えれば損失にしかならないでしょう。以上のことからインフレ連動債がよりよい選択だと考えています。

司会:インフレへの懸念が債券や債券ファンドの業績低下につながっていますが、債券の購入について投資家はどう考えるべきですか?

Christine:債券を購入・保持すべきする投資家は、退職間近で資産の目減りを避けたい人々です。それ以外の人がこれらを注視する必要はないでしょう。

司会:グロース株とバリュー株の成長度が逆転する事態がおきましたね(参照:2021年上半期のETFパフォーマンス)。これについて投資家はどうすべきですか?

Chris:バリュー株の成長が著しかったので、買い増ししたいと考える人がいるかもしれませんが、特に行動を起こす必要はないと考えています。ただし、テクノロジー関連株の成長により暴露が多くなってしまった方は暴露量を適切に戻してください。

司会:今日はありがとうChris。

考察

さて、Christineはコモディティを保有することはインフレ対策にはならないと言っていますが実際はどうなのでしょうか?投資細胞くんの答えもChristineと同様にノーです。ぜひ株式を保有してください。

単純な比較として、アメリカにおける最近30年のゴールドとS&P 500指数の価格推移を比較してみました。まずChristineは、コモディティが「ここ数年で、50%またはそれ以上の成長」を示したと言っていました。確かにゴールドの価格推移のグラフを見ると、2015年前後は1200ドルで推移していたゴールドの価格が最近では1800ドルになっており、約50%の成長が見られました。

ゴールドの価格推移

ゴールド価格の推移-30年
グレー部分は経済不況の期間を示す
macrotrends.netより引用

次に、「コモディティが株式市場に後れを取」っているとのことでした。前の段落と同様に2015年前後のS&P500指数を見てみると、2000ドルですね。一方で現在のS&P500指数は約4300ドルとなっており215%の成長を示しています。以上のことより、ここ数年で、コモディティが株式市場に後れを取っていることは事実といえます。

S&P500指数の推移
S&P500指数の推移-30年
グレー部分は経済不況の期間を示す
macrotrends.netより引用

最後に、1990年頃の両指数を比べてみると、ゴールドが400ドル、S&P500指数が480ドル前後になっていますね。30年後の現在、ゴールドが1800ドル、S&P500指数が4300ドルとなっています。つまり30年の間で、コモディティの価格が4.5倍に成長する一方で、株式の価格は約9倍成長していたということです。長期でのポートフォリオを考えれば考えるほど、株式を保有することがあなたの資産を成長させることと同義であると言えますね。

おすすめ投資信託

ハンズフリーポートフォリオにおすすめの投資信託は以前のブログで紹介しましたので(ズボラさん必見!ハンズフリーポートフォリオでらくらく資産運用)、株式に関連した投資信託はそちらを参照にしてください。そこで今回はインフレ連動社債に投資できる海外ETF、iShares Inflation Hedged Corp Bd ETF (LQDI)をお勧めさせてもらいます。気になる方はぜひ購入してみてください。

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saibou

Morning Star investing insight

*上記のコンテンツの一部はPodcast "Investing Insights"を和訳したものであり、情報提供のみを目的としております。また内容は作成時に入手可能な情報に基づくものあり、読者様の財務状況や投資目的を考慮しておらず、内容が適さない可能性があることにご留意ください。