はじめに
米国の住宅価格の上昇が止まりません。
一戸建て住宅の価格は新記録に達し、販売用住宅の供給はここ数十年で最もタイトです。
住宅ローン審査は金融危機以来の最高難易度になりつつあります。
賃貸市場も同様で、ほとんどの部屋は埋まっており、賃料は上昇しています。
住宅ローンの金利ももちろん上昇しており、住宅購入者や投資家は次はどんなことが起きるのかとハラハラしています。
今日は米国の住宅市場の今後についてみていきましょう。
スタート
いいニュースは、2000年代初頭に起きた住宅ブームの破綻と今回の特徴が異なるということですね。
住宅価格は上昇し続けますが、現在の住宅ブームは「健全な財政をもつ所有者」が住宅を欲していることに起因した「供給の制限」が原因となっています。
わるいニュースは、住宅ローン金利の上昇が低所得者の財政を圧迫することですね。
「共通しているのは、単純に供給が不足していることです」とMorgan Stanley co-head of U.S. Securitized Products ResearchであるJames Eganは言います。
「FRBは利上げを予定しており、賃貸の占有率は史上最高であり、住宅供給は史上最低です。これは賃料に継続的な圧力をかけると私たちは考えています。」
Morganstanleyの住宅アナリストとストラテジストは、住宅価格、金利、賃貸料の価格など、この住宅市場特有の特徴を概説してくれました。
Federal Reserve Bank より引用 |
タイトな供給が価格を押し上げる
金利の上昇が住宅市場に影響を与えるのにそれほど時間はかかりません。
歴史的に金利の上昇は住宅販売量、または住宅の数に影響を与えますが、わずかなタイムラグがあります。
住宅ローンの利率が高くなると所有コストが上昇するため、金利が上昇してから12か月前後で取引量は減少します。
ここから住宅の供給量が増えてくることになります。
供給量の増加は、住宅価下落の前兆となることがよくありますが、常にそうとは限りません。
「現在住宅を所有している人は購入時の低金利にとどまる傾向にあります。過去数か月の住宅ローン金利の急激な上昇は、所有者の買い替え意欲を削ぐため、空き家は簡単には増えないでしょう」とJames Eaganは言います。
「したがって、住宅価格の上昇は鈍化する可能性がありますが、それでもプラスを維持できると考えています。」
James Eaganと彼のチームは、住宅価格の前年比の上昇は、2021年12月の19%近くから2022年末までに約5%まで、今後12か月で鈍化すると考えています。
一方で住宅ローン金利の大幅な上昇は、販売用住宅の供給をさらに低下させる可能性があります。
金利が上昇すると、売り手になる可能性のある現在住宅を所有している人たちは、低固定金利の住宅ローンを手放したくありませんからね。
そしてこれは、2000年前半の住宅ブームとの重要な違いです。
現在の住宅所有者は、以前の住宅サイクルよりも経済的に良好な状態にあるのです。
負債はより少なく、住宅担保はより多く、管理可能な範囲の住宅ローンの支払いを行っています。
「過去10年間の住宅ローン審査の厳しさのおかげで、住宅所有者の財政は健全です。彼らが住宅を低価格で手放す理由はないでしょうね。」と、Morgan Stanley co-head of U.S. Securitized Products ResearchのJay Bacowは述べています。
言い換えれば、住宅購入の機会をうかがっているバイヤーは、住宅ローンの利率が高くなったとしても、不良物件や差し押さえ物件が市場に出回ると想定してはなりません。
住宅の価格と賃貸の家賃が上昇する負のサイクル
金融危機の後、新しい住宅建設は事実上停止しました。
少しずつ新しい建物が作られ始めていますが、2006年後半のピークには程遠く、新築物件の数は、現在の購入者からの需要を満たすには不十分です。
最近、新規建設の許可が大幅に増加しましたが、それでも間に合っていないのは、コロナウイルス蔓延対策のためのロックダウン、労働力不足、そしてサプライチェーンが複雑な問題を抱えているからです。
「建設許可が下りて実際の建設が開始された住宅数を見ると、前年のレベルから13.5%、パンデミックの開始から24.6%増加しています。しかし、サプライチェーンの混乱により建設が長引いているため、通常のタイムラインで完了していませんね。」
そう、James Eaganは付け加えます。
建設ペースが上がったとしても、新しい住宅供給は需要を満たせないかもしれません。
賃貸市場を見てみると、こちらの賃料も上がっています。
クラスAに分類される、賃料が高く空き室が少ない集合住宅の賃料は、2022年の第1四半期において前年比で15.3%増加していました。
上昇する家賃は、頭金を貯蓄する世帯の経済を圧迫し、住宅購入の見通しをさらに延期するでしょう。
このため賃貸に住む人は新しい住宅を購入することができず、賃貸の部屋に空きを作ることができないため、家賃は上がり続けます。
Morgan Stanleyの研究グループによると、住宅を買う余裕がある人は、シカゴ、ホノルル、ニューヨーク、サンフランシスコに比較的優良な物件があることを覚えておいてください。
ただし、Morgan Stanleyが追跡している390、すべての市場において、購入するよりも、賃貸するほうが手ごろです。
U.S. REIT Equity and Commercial Real Estate Debt Researchを率いるRichard Hillはこうコメントしています。
「史上最高値に近い賃貸占有率と史上最低の住宅供給がこのまま続き、住宅の価格が上がり続けることを我々は心配しています。」
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